思いつきの短編物語を素人が書き捨てる。ここは塵箱<ゴミバコ>の深い底…。誰かが立ち寄り、去っていく。
彼に会えるのは夢の中だけだった。
それもほんの僅かばかりの時間…

そう、今回ももう時間が迫っていた。

「カナリア、もうそろそろ時間じゃないかい?」

服を全身黒で統一した男が私に話しかけてきた。私はこの人が好きだ。いや…この顔をした別の人が好きなんだ。だからその複雑な気持ちを悟られぬように常に冷静なふりをする。

「いいえ、まだやれます。」

言葉ではそう答えたが体は正直だ。

手足に痺れるような感覚が走り、体の抹消から砂時計の砂のように存在が落ちていった。

「くっ…前回よりも短くなってる…」

「おそらくアレの耐性がついてきたせいだ」

悲しそうな、悔しそうなどちらともとれる表情をしてヒスイと呼ばれる男は手足を失った私を支えた。


「日に日にこちらにいる時間が短くなってきている。もう我々に残された猶予はない。終局は次回、君がこちらにやってくる時だろう。」

私を抱える手に少しばかり力が篭る。

「えぇ…巧のためにも、そして私のためにこんな世界は終わらせてみせるわ。」

「そうだね。」

ヒスイはさらに悲しそうなうれしそうな複雑な顔をして私を見つめた。

どうしてそんな顔をするかなんて私はとうに知っている。でも、そんなの目的のためには障害にもならないから気にもしてない、彼だってそれがどうしようもないことだということは分かっているはずだ。

会話の最中も私の体の崩壊は続いていく。下半身が消え失せ、あとは肩と首と頭だけになったあたりで意を決したようにヒスイが話しかけてきた。

「ねぇ、カナリア…今度君に会えるのが最後になるんだね?」

「そうね。巧を探し出すのに時間を使いすぎてしまったし、もともとこの世界に入れたのだって偶然みたいなものですもの。上出来でしょ?」

「そうだ…ね。残念だよ、もしこの世界が終わって目覚めても君に会えるのは巧君のほうなんだからね。僕は・・・」

「それは言わない約束でしょ。」

「うん。すまない、今のは忘れてくれ。僕は君の望みが叶えられればそれでいいんだから・・・」

「・・・」

お互いに沈黙を保ちながら、私の意識はプツリと消えた。



・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

・・・



目を覚ますとすでに日は落ちて月明かりのみが病室の片隅を照らしていた。たぶん様子からして夜の9時辺りだろうか?すでに面会時間は終わっているけれど、私がこうして彼の側にいられるのは病院側の配慮だろうか、それとも病院側のあきらめなのだろうか・・・。

私は椅子に座りながら彼の手をとって寝ていた。彼は長い間眠り続けて、手は少し骨ばってしまっているけれどそれでも生きていた。生きてはいるのだけれど、起きてくれないのだ。

そこにいるのだけれど、何も答えてくれないし死んでいるようだとも思った。

でも、彼の手の温もりが私の手を通して伝わってくる度に彼がまだ生きているということを実感できた。こんなことを私はもう数えられないくらい繰り返してきた。


きっかけは本当に偶然だった。

雑誌で偶然同じ夢をみるには・・・と記された、眉唾ものの記事を見つけたのだ。その頃の私は相当まいっていたのだろう、誰もが嘘だと思うようなことでさえ試さなければいられなかった。

少しでも彼に会える可能性があるのならなんでもできた。

睡眠薬を片手に病室に乗り込み、彼の側に椅子と長時間座っていられるようにクッションを置いて準備は完了。

そして、彼の手をとり眠るのだ。


夢というのは脳内の活動であり電気信号である。他者が同じ夢を見るにはその電気信号の波に干渉し、同調する必要があると。

だからといって手をつないだら完璧なのかと言ったらそうだとは断言できない。だって、その雑誌には成功したとか実際どうしたかなんて書いてなかったんだから。


薬が効いてきたのだろうか、うとうととしだし急激な眠気に一気に意識が霧散した。



僕と同じ顔のそいつはとても切なそうな、愛おしそうな表情で遠くを眺めている。

その視線の先で、砂埃が一つ二つと線を引きながら上空を舞い、一つが叩き落されてこちらに降ってきた。

僕が立っている木にそれはグシャリという鈍い音をたててぶつかった。激しく飛び散る木の葉と木片に紛れて血の匂いが混じる。

上空に残ったもう一つの線もゆっくりとこちらに降りていき、ギョクの前に落ちた。


「あぁ、カナリア。もう、終わりにしたのかい?」

砂埃が晴れていったその後には金色の複数の糸が棚引く中に一人の女性が立っていた。ただ、先ほどよりもその綺麗な糸には赤黒いものがこびりついていて、それが凶器なんだなということは一目両全だった。

「そうね。なかなか骨のある女だけれど相性が絶望的に悪すぎるのよ。これも因果なのかしら…。」

ふん、と不機嫌そうに言い捨てたカナリアだが体の所々に銀の攻撃でできた傷が残っていた。

少し遅れて木にぶつかったあたりも砂埃が晴れてきたがそこにはカナリアとは比較にならない位の深手の傷を負った銀がグッタリと倒れていた。

「銀!!」

慌てて彼女の近くに駆け寄りその身を抱きかかえたが完全に気を失っている彼女はズシリと重く呼吸も微かにしているほど痛めつけられていた。

この時、僕の感情の中にどうしようもない怒りが沸いてきて今にもそれがあふれ出しそうになった。でも今の僕にはどうすることもできないというのが分かる位の冷静さが残っていたことがとても憎らしかった。

逆上して相手に突っ込むっていうのがかっこよく見えそうだけれど、それよりも彼女を生かすことが僕にとっての第一選択であった。

僕は意識の消え入りそうな彼女を背負ってその場から背を向ける。
もし、このままギョク達が追撃をしてきたら確実に二人とも死んでしまうだろう。でも僕にはこの選択しかない。


「巧君…そんなに夢の世界のほうが大事なのかい?」

「夢だろうとなんだろうと、銀をやらせるわけにはいかないんだよ・・・。攻撃するならしてみろよ、意地でも逃げ切ってやる。」

ギョクが無表情な顔をして声をかける。

「それもありだろうけれど、こちらも限界みたいだ。今回は君の現状を教えることができただけでもよしとしようかな。ただし、次は必ず死んでもらうよ。」

「勝手にしろ。」

ノロノロと彼女を背負っている姿とは反比例した強気の言葉を放てるのはやはり僕が怒りで煮えくり返りそうになっているからなのだろうか?それとも無力な自分に自棄を起こしているのだろうか?今はもう分からない。

「巧!!」

立ち去ろうとする僕に慌てた声でカナリアが話しかける。僕は振り返らないでただ足を進めた。

「あなたの夢はきっと覚めるわ!その時側にいることができるのは誰か思い出して!じゃないと私はあなたを殺すことが出来ない…巧…」

最後の言葉はかすれて僕には聞こえなかった。
「僕はもう一人の王さ。」
奇妙な格好をした男はいきなり不思議なことを口にした。

「なんだい?そんな顔をされるなんて意外だな。」

玉【ギョク】と言われる男はオーバーなリアクションで残念がる。まるで演劇を間近で見ているかのようなわざとらしさだ。僕は直感でこいつとは仲良くなれそうにないと思った。

僕はもう一歩男から離れる。二人の間に静寂が流れ、まるで風まで空気を呼んで止んでしまったかのように感じた。

「君はこの言葉に何か違和感を感じないかい?【王は夢を見る】という言葉に。」

その言葉はこの可笑しなことが起き始めてから何度も聞いた。さっきもカナリアからヒントとして…。

「たしかに心がざわつくよ!でもそれがなんだっていうんだよ!」

「ふぅん…やっぱり本人は気づかぬフリか。」

酷く残念がるギョクにさらに僕のイライラはたまる。

「分かってるくせに認めたくないから白をきるようだね。もう時間がないから手っ取り早く種明かしをしよう。」

ギョクは先程まで座っていたガードレールから飛び降り、土がむき出しになった部分に座り込んだ。

【王は夢を見る】

男は地面にさっきの言葉を書く。そして平仮名の部分だけを足で消していった。
【王※夢※見】

「夢ってのはね、現【ウツツ】の中にしか内包されてないんだ。これはそういう意味。じゃあ、その夢を見ている王様はどこにいるんだろうね?もしこの世界が夢だとしたらそれは望めばある程度のことが実現してしまうだろうね。だって夢を見ている本人がこの世界の王様なんだから。」

夢や現実。その二つをふんだんに盛り込んだ言葉に僕は酷く混乱した。

「お前の言いたいことがさっぱり分からない…何が一体どうだっていうんだ?」

「まだ、気がつかない?端的に言ってしまえば、今君が立っているこの世界こそが夢なんだよ。現実世界の君は長い時間眠り続けて恒久の夢物語を綴っているんだ。」

「な!?僕が寝たまま夢を見続けている」

「そうだね・・・大体二年くらい。現【ウツツ】では君はもう20歳だ。」

「・・・・・・・」

あまりに衝撃的なことに僕は言葉を失う。王様のくせにまったく現状が分かっていない。まるで、裸の王様…いや、それよりもこいつの目には滑稽に見えるだろう。

ショックで手が震えているのか、これが現実でないことへの憤りなのかは分からない。本当に分からないことだらけだ。

「僕の夢ならば別に僕が王様で文句ないだろ?」

「いいや、俺はあるんだよ。君がいるときっとこの夢は醒めてくれない。それがとても嫌なんだ。現【ウツツ】に戻りたいんだよ俺はさ。」

初めは無機質だった言葉だったギョクだが、今は声を荒げて主張する。こちらを向きながらフードに手をかける。

「!!??」

フードの下から覗いたのは良く見た顔だった。


いつも顔を合わす。



とても親しいといってもいい。

とても長い間見た顔。





「僕・・・。」


「そう、君だ。王も君。玉【ギョク】も君だ。」

僕と同じ顔をした他人が話しかける。

「玉【ギョク】は王と拮抗するんだ。君が夢から醒めたくないと思えば逆に玉は夢から醒めたいと思う。本来ならば王の気持ちが優先されて俺のほうは黙っているんだけれど、今回ばかりは例外でね。」

話を進めながら未だに戦闘の続く丘の上をギョクは愛おしく眺める。自分の顔でこんな顔をされてしまうととても複雑な気分だった。


「彼女が望んでいるんだ。」

同じ顔をした男は答えた。

テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

おひさしぶりで〜す゚+.(・∀・).+゚.



osora



なんだか晴れやかな気分だったのでうっかりその日無駄に空を携帯で激写!!

ていうのはどうでもいいとして・・・やっとこさ、大きな一次試験を乗り越えました!!

とは言ってもこれから二次試験があるのでそううかうかしてられないんですけれどね(あはは・・・)


この朱色の水を開いてからかなり時間が経ちましたがここまでほったらかしにしたのは初めてです。


それでもたま〜に様子を見に来ると意外とカウンターが回っていたりとお越しになった人達もたくさんいたようで…

完全復帰は七月の上旬になると思うのでまだ、ノロノロ、コソコソな更新しかできませんがどうぞよろしくおねがいします、はい。

テーマ:日記 - ジャンル:日記

僕は走り続けた。

僕は必死に岡から下るアスファルトの道を走っていた。遠くから地響きのような音が聞こえていた。

彼女が…銀が戦っているのだ。

彼女は行ってくれと言った。でも、それは近衛としての言葉であって、単なる銀という立場ではどう思っていたんだろうか?

考えながらその地響きで彼女の生存を…いや戦いが続いていることを確認していた。


そして僕は走り続けた。

「・・・」

進めていた足が出なくなった。逃げるという動作よりも思考の方が優先され始めてきた。

「・・・ちょっとまてよ・・・あの体は由依のものだ。それに精神は銀だ。これであいつがやられたら・・・。」

僕は酷く恐ろしい結末を想像してしまった。今、この場でそれを口にしてしまったら本当にそうなってしまうんじゃないかと思って慌てて胸終い込んだ。

振り返って爆音がする丘の上を見つめてみた。もしも僕があの場所に飛び込んでいったらどうなるだろうか?

たぶん、銀は怒るだろうな。下手をすると殺されかねない。

でも…

「でも、一度に二つも失うなんてそんなの嫌だ!」

さっき来た道を僕は戻り始めた。どんどん音が近くなって恐怖と一緒に銀に会えるという変な気持ちでぐちゃぐちゃになった精神状態では僕は一体何をするのかまったく検討がつかない。

むしろ何も出来ないのかもしれない。それでも逃げるよりはマシだと思う。


走っていると遠くの道のガードレールに人がぼんやりと座っているのが見えてきた。
なんというか、全身が真っ黒でなんだかカラスみたいな印象の男だった。この異常な状況にまったく動揺もしないでのんびりと佇んでいる。

「あ、あの!ここは危ないですよ!早く逃げたほうがいいですよ?」

「・・・でも、君はあえて近づいているよ?」

「それは・・・行かなきゃいけないんです!」

「へぇ・・・本当に死んでしまうよ?君が行ってどうこうなる問題なのかな?王様が敵陣に突っ込むだなんてどんなゲームでもナンセンスな話だと思うけれど。」

「え!?」

僕は王様という単語にギクリとした。よく見るとフードをすっぽりとかぶって顔も見えないし、まるでゲームに出てくる不気味な魔術師みたいだ。とても、常人には見えない。

「王様が倒されたらすべてが終わりってことさ。でも君らしいね巧君。」

「な・・・お前誰だ?」

かすかに笑っている男から僕は一歩後ずさる。

「誰ね…そうだね〜王がいるならその相手は玉だ。だからあの子はギョクもしくはヒスイと呼ぶ人もいる。」


「ギョク・・・。カナリアの仲間?」

「そうだよ。君の敵であり、この世界のもう1人の王さ。ただ君よりも影響が少ない存在だけれどね。」




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文章については面白さ、楽しさを保証しかねます。
それでもよければお付き合いくだされ…

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